だんだんと暖かくなり、植物が一番元気な季節がやってきました。桜から始まり、チューリ ップやネモフィラ、アジサイやヒマワリと色とりどりの植物とそこに集まる鳥や虫たち。植物も動物も少しずつ動き出す春。ついつい花ばかりに見とれていれば、知らない間にわんちゃんがパクっと何か一口、なんてことが多々あります。食べると危険な物だってわんちゃん自身わかるでしょ? と思いがちですがそんなことはありません! わんちゃんが食べてはいけない触れてはいけない危険な動植物は実は身近に潜んでいます。
なんで植物を食べるの?
イヌは肉食に近い雑食と言われています。そのため草を食べるということは決して不思議なことではありません。しっかりとした根拠はありませんが、なぜわんちゃんが植物を食べるのか。
・嘔吐をするため
・ビタミンなど栄養欠乏の補充のため
・草を食べるのが好き、楽しいため
・運動不足などのストレスのため
と言われています。草を食べることに関しては危険な行動とは言い切れませんが、植物に使用されている除草剤や毒性の植物を食べる可能性がある、ということが最も危険な事です。
季節ごとの危険な植物
春から夏にかけてよく目にする植物も実は間違って食べてしまうとアレルギーを起こしたり消化器官や呼吸器官などに影響を及ぼしたり、最悪の場合死に至るケースもあります。
4〜5月
チューリップ
危険部位:全体
有毒成分:ツリピン、ツリバリン
症状:嘔吐、下痢、血便、呼吸困難など。死亡する場合も。
スズラン
危険部位:全体
有毒成分:コンバラリン、コンバラトキシンなど
症状:嘔吐、めまい、血圧低下など
ドクウツギ(日本三大有毒植物)
危険部位:全体
有毒成分:コリアミルチン、ツチン
症状:嘔吐、視覚異常、血圧上昇。死亡する場合も。
オダマキ
危険部位:全体
有毒成分:プロトアネモニンなど
症状:流涎、嘔吐、下痢、痙攣。死亡の場合も。
ヒエンソウ
危険部位:全体
有毒成分:ジテルペンなど
症状:嘔吐、腹痛、興奮。死亡の場合も。
ドクゼリ(日本三大有毒植物)
危険部位:全体
有毒成分:シクチン、シクトキシン
症状:嘔吐、麻痺、手足の硬直。死亡の場合もあり。
アヤメ
危険部位:根っこ、茎
有毒成分:イリジェニン、イリジン、テクトリジン
症状:皮膚炎、嘔吐、下痢、胃腸炎
キキョウ
危険部位:根っこ
有毒成分:サポニン
症状:流涎、ふらつき、呼吸困難、意識障害。死亡の場合も。
6〜8月
アジサイ
危険部位:つぼみ、葉
有毒成分:生産配糖体
症状:過呼吸、ふらつき、けいれん、麻痺など。死亡する場合もある
アサガオ(和朝顔)
危険部位:種
有毒成分:ファルビチン、コンボルブリン
症状:嘔吐、下痢、腹痛、幻覚、反射低下など
ユリ
危険部位:全体
有毒成分:不明
症状:嘔吐、下痢、食欲不振、運動失調、急性腎不全
バイケイソウ
危険部位:全体
有毒成分:ジェルビン、プロトベラトリン、ベラトラミン
症状:嘔吐、下痢、痺れ。死亡の場合も。
ヒヨドリジョウゴ
危険部位:全体
有毒成分:ソラニン、アトロピン
症状:嘔吐、腹痛、下痢、血便、呼吸困難。死亡の場合も。
トリカブト(日本三大有毒植物)
危険部位:全体
有毒成分:アコニチン、メサコニチン、ヒパコニチン
症状:嘔吐、ふらつき、起立不能、呼吸困難。
オシロイバナ
危険部位:根っこ、茎、種子
有毒成分:トリゴネリン
症状:幻覚、嘔吐、下痢
注意するべき危険な昆虫やダニ
昆虫は最も種類数の多い生き物と言われており、日本にも数多くの昆虫やその仲間がいます。
わんちゃんには、動いている物を追いかけて口に入れるというものがあります。暖かい時期の活発に動く虫たちはわんちゃんにとっては魅力的です。
・マダニ
マダニに吸血されることで貧血や皮膚炎、栄養障害などを引き起こします。また、マダニが運ぶ病原体が感染症の原因となり、場合によっては命に関わる危険性もあります。
・ノミ
ノミは吸血するだけでなく、皮膚炎などのさまざまな病気を引き起こします。人にも病害を与えることもあるので注意が必要です。
・ハチ
ハチは毒をもっているため、刺されると赤みや腫れ、痛みや痒みを伴います。
また、毒に対してアレルギーを持っていた場合、アナフィラキシーショックを起こす可能性があります。この症状は嘔吐や呼吸困難、麻痺や喘息、最悪の場合ショックを起こして死に至ることもあります。
予防対策
・ノミダニの駆虫薬を病院で処方
・ブラッシングを日頃から行い、ダニなどが付着していないか確認
・動物用虫よけスプレーや虫よけの首輪の仕様
・ハチが飛び交う場合は近くに巣がある可能性があるので離れる
・ハチは黒い物を攻撃対象とするため、白、ピンク、水色などの刺されにくい色の服を着る
他にもカマキリやコオロギ、蛾やゴキブリなどにもその虫特有の寄生虫が潜んでいる可能性があるので食べさせないように注意しましょう。
襲ってくるかも?な危険な動物
クマやイノシシといった大型動物はもちろんですが、ヘビやトリ、ノラネコも危険を感じて襲ってくる可能性はあります。
・マムシやヤマガカシなどのヘビ
日本には30種類以上のヘビが生息し、その中にはマムシ、ヤマガカシ、ハブという3種類の毒蛇がいます。ヘビの活動が最も活発になるのは産卵期の夏ごろ。基本的には臆病な性格の種類が多く、こちらから刺激しない限りは噛みついてくることはありません。しかし、垣根や草むらにわんちゃんがふいに頭を突っ込んだ瞬間に噛みつかれるという事故は少なくありません。咬傷事故で死に至るケースは極めて稀ですが、膿みや腫れなどの症状はあるため注意が必要です。
食べちゃダメ!な危険な動物
草むらや垣根や田んぼには小さな生き物が隠れていることがあります。本能で追いかけてそのまま飲み込んでしまうことがありますので注意が必要です。
・ヒキガエルやアマガエルなどのカエル
茶色く、イボイボな皮膚が特徴のヒキガエル。実はこのカエルは有毒性のカエルです。日本でもよく見かけるヒキガエルは危険を感じるとブフォトキシンという毒を耳の後ろから出します。この毒は皮膚に炎症を起こしたり、食べてしまった場合には神経や循環器系に障害を起こし、嘔吐や下痢、心臓発作を起こす可能性があります。
また、カエルと言ったら思い出す緑色のアマガエルも実は毒を持っています。ヒキガエルよりは弱い毒ですが、アマガエルは全身の皮膚から毒を出します。口腔内に傷がある場合は痛みや炎症を伴います。
そして毒を持っていないカエルにも実は寄生虫が潜んでいる可能性があります。よく聞く寄生虫の 1 つとしてマンソン裂頭条虫います。この寄生虫は大きな臨床症状は出ませんが 1 度寄生すると駆除するのにとても時間がかかります。また、ヒトにも移る人獣共通感染症とされています。
予防対策
毒ヘビの生息区域は自治体によってはホームページなどで公表している場合もあるのでお出かけ前に参照すると良いでしょう。茂みの中や道にあるものに興味を持った時はすぐに離せるようにリードでコントロールしましょう。
まとめ
自然の多い山でも近くの公園や河川敷でも身近なところにも危険な動植物や虫などが潜んでいます。それ以外でも、植物には除草剤や農薬が付着していたり、他動物の糞尿が付着している可能性があるため、それらが原因で下痢や痙攣などの症状が出てしまう可能性もあります。また、日本にはたくさんの虫や野生動物がいます。春先から夏にかけては特に活発に活動する時期でもあるので、ふとした瞬間に出会う事があるかもしれません。そういった場合でもお互い慌てずに刺激しないように心がけて行動して下さいね。
私達も動き出したくなる季節は植物も動物もまた同じように動き出します。少しだけ回りにも目を向けてわんちゃんとのお出かけを楽しんで下さい!
記事制作・監修 獣医師 天野謙一郎